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(書評) シリア原子炉を破壊せよ

(出版) 並木書房

(著者) ヤーコブ カッツ

 

イスラエルの「冷徹なまでの現実的思考」とその「行動力」に圧倒される。
そして、最後には「日本も同じことができないのか」と現実に戻る。

 

イスラエルは常に侵略の危機に晒されている。
1) イスラエルを敵視する言動を繰り返す周辺国
2) 核武装への努力を惜しまない周辺国
3) 同盟国であっても、最後は「自国に差し迫った危機が及ばない」として行動に移さないアメリカ。

同じ境遇をもつ国が思い当たらないだろうか? それも「実際に周辺国が核武装をして、その核保有国の中には領土拡大の野心をちらつかせている国もある」というケース。そう、日本である。

自分の危機に対して自分で行動を起こす国だけに対して、同盟国は「同盟の効果」を感じるのではないだろうか?

ネタバレも含むが、強烈な印象があった部分を以下に引用。

***引用開始***

(中略)シリアの原子炉の存在を公表して外交努力を開始し、原子炉を解体しようとブッシュは提案した。
オルメルトは即座に強く反応した。
「大統領閣下、あなたの主張は理解できますが、忘れないでください。最終的にイスラエル国の安全を保障する責任は私の肩にかかっています。必要な措置を講じます。私の言葉を文字通り受けとっていただいて結構です。私は原子炉を破壊します」。そして「貴国の決定は我が国の神経を逆撫でするものです。率直に申し上げます。あなたの戦略は私にとってとても不愉快なものです」

オルメルト首相の原子炉爆撃の報告を電話で受けた)ブッシュは慎重だった。
「それは興味深い。何か反応があると考えていますか?」
「いまのところはありません。すべての(シリア政府の)兆候は反応がないことを示しています」
オルメルトはこれで会話を終えるつもりだったが、ブッシュは耳を疑うような言葉を発した。
「OK。一つ知っておいて欲しいことがあります。もし何か反応があったら、あなたにはアメリカがついていることを忘れないでください」
オルメルトは感動で身体が震えた。この言葉を忘れることはないだろう。ブッシュの言葉でオルメルトは自信でみなぎり、正しい決断を下したと確信した。

自分が自分のために自分の人生を生きていないのであれば、いったい誰が自分のために生きてくれようか。約2千年前、ユダヤの律法学者ヒレルが説いた言葉である。

***引用終了***